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王位継承順位の考え方

今回は、王位継承者の順位のつけ方について説明します。

すべての国の継承方法を網羅する説明は難しいので、創作でよく使われている方法に絞って記述しています。あらかじめご了承ください。

 

王位継承権とは

王位継承権とは王の地位を引き継げる資格のことです。王になれば莫大な資産と権力が手に入るため、誰でも王になれるようにしておくと子孫同士の無益な争いを招いてしまいます。そこで古来の人々は、憲法や法律によって王になる資格を持つ人を順位づけておき、王に不幸が訪れた際にはその順位にしたがって次期王を決めていました。ちなみに皇帝の場合は皇位継承権といいます。

継承順位のつけ方は国ごとに違うので、創作ではオリジナルの規律を作っても問題ありません。たとえば「身体に王の紋章が出た者を継承者とする」「王族同士で戦い、一番強い者を継承者とする」などは少年漫画でよく見かける設定です。

極端な話、その人物が次期王にふさわしいと皆が納得できれば問題ないので、平民出身の勇者を王女と結婚させて王にすることも不可能ではありません。ただし、その場合は既存の王位継承法の条文を変える必要がありますし、本来の王位継承者から反感を買うことも忘れてはいけません。

 

継承順位をつける前に考えること

継承順位をつける前に決めておかなければならないことを説明します。

 

女王が認められているか否か

まず考えなければならないことは、その国で女王の存在が認められているかどうかです。中世の西ヨーロッパでは、サリカ法典が女性による相続を禁じていたため、女性は領地を所有する王になることができませんでした。このように、女王の存在を認めない背景が存在する場合は女性に王位継承権を与えることができなくなります。

また、女王が認められている場合でも、兄弟や親族に男子がいればそちらを優先するケースもあります。

 

女系継承が認められているか否か

王子と民間の女性が結婚した場合、その子供は王族の人間です。一方で、王女と民間の男性が結婚した場合、その子供は民間の家系の子となります。後者の子供が王になることを女系継承といいます。

女系継承の問題点は、古来から継承されてきた「男系男子による王統」が崩壊してしまうため、周囲の反発が大きい点。そして野心家の男性が王女と結婚し、その子供がやがて君主となったとき、王の父として男性が政治に口出しできてしまうという点があります。これを防ぐために多くの国で男系継承がとられていますが、これだと男子の跡継ぎが生まれなかったときに王朝が断絶してしまうので、次期王を決める段になって、仕方なく女系継承も認めるという流れになるようです。 

女系継承を認めない場合は、王族の女性の子孫は継承権を持つことができなくなります。

 

側室や公妾が存在するか否か

大雑把に説明すると側室は正妃以外の妻、公妾は公の愛人です。一夫多妻が認められている国には側室があり、一夫一妻制の国には公妾があります。もちろんどちらも存在しない国もありますが、王の血脈を維持することを考えると、側室はつくった方が合理的といえます。

側室と公妾の大きな違いは、正妃以外が産んだ子供(庶子)に継承権を与えるかどうかという点です。側室の子は継承権を持ちますが、公妾の子は継承権を持ちません。そもそも公妾は既婚者がなるもので、子供が生まれると本来の配偶者との子として育てるという仕組みなので、基本的には王の子として認知もされません。

側室制の場合、たいていは庶子よりも正妃(正室)の子の方が継承順位は高くなります。国によっては正室側室の区別なく年長者から順に順位をつけたり、男子を生んだ側室が正室に格上げされたり、順位づけを行わず王が次期王を指名したりするケースもあります。

 

継承順位のつけ方

継承順位は原則直系卑属優先・年長者優先です。直系卑属とは自分の血を引く子孫のことです。ここに以下の条件を加え、順位をつけていきます。

  • 女王を認めるか認めないか?
  • 女王を認める場合は男子優先か年長者優先か?
  • 男子優先の場合は、どの範囲まで男子を優先するか?
  • 女系継承を認めるか認めないか?
  • 女系継承を認める場合は男系優先か年長者優先か?
  • 男系優先の場合は、どの範囲まで男系を優先するか?
  • 側室が存在するか?
  • 存在する場合は正室優先か年長者優先か?

 

以下の王系図をサンプルとして、いくつか例を挙げてみましょう。
前提として、先王の長男が現王として君臨しており、王弟は先王からハイドレンジ伯に封じられているものとします。第一王女は他国の王族であるローズ家に嫁ぎ、男子を儲けています。

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例1.男系男子継承制

一番単純なケースです。女子と女系子孫に継承権を与えないように順位づけしたものが以下の図です。

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多くの国では、第一王子の子孫の継承順位は第二王子より上です。ここではそれに倣って順位を決めていますが、第二王子に先に継承順位を与えても問題はありません。男系男子が見つからない時は先王の兄弟の子孫へと遡っていって、誰も候補がいなくなってしまったら王家は断絶します。

  

例2.男系・女系長子継承制

 原則として男系男子のみですが、始祖の男系男子がいなくなったときは女子や女系子孫にも継承権を与えます。女子と女系男子のどちらを優先するかは状況によるので、あらかじめ順位をつけておくことは少ないです。戦争中や感染症の蔓延時、男子が幼すぎるときなどにこのような状況が生まれます。

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 例3.男子優先長子継承制

 男女に継承権がありますが、姉弟間では男子を優先します。下図では男系子孫と女系子孫を同等に扱っていますが、国によっては男系を優先することもあるでしょう。

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例4.絶対的長子継承制

性別にかかわらず姉弟間では年長者から継承順位を与えていく方法です。近代化し、男女平等の価値観が普及しはじめると例3の男子優先長子継承制から移行してきます。逆にいうと、女性の身分が低い国でこの制度が取られているのは違和感があります。

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例5.側室が存在する場合

上の方でも書きましたが、側室が存在するからといって必ずしも継承順位が変わるとは限りません。側室の子よりも正室の子を優先するというルールがあるかどうかが重要です。ルールがある場合の男系男子継承制の図を以下に示します。

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王位継承争いの要因

 以上のように王位継承については厳格なルールが定められているわけですが、史実でも創作でも継承争いは発生します。なぜでしょうか? 理由はいくつか考えられますが、よく目にするのは、継承順位が下位の者が王に選ばれてしまったというシチュエーションです。

通常、継承順位が最も高い人が王になります。しかし、第一位の人が王にふさわしい資質を持っているとは限りません。信仰している宗教、主張している政治方針、浪費癖などの内面的な理由もあれば、母親の家柄や血筋に関する理由もあります。特に血筋は大切で、たとえば母親が不倫していて、本当に王の血を引く子供かわからないケースだと、その子供を王にしようとすると強い反発を受けることになります。

このような場合に、王や議会が継承者から権利をはく奪し、下位の者を王にすることがあります。また、王がルールを無視して指名してしまうケースもあります。すると本来王になるはずだった継承者やその周囲はたまったものではありません。約束された地位を奪われたのですから、当然怒り自分の継承権を主張するわけですね。

具体的にどのような理由で継承争いが起こったのかについては、また別の記事に回したいと思います。